会社から帰宅すると、娘が目を腫らして泣いていた。
同級生の男子が突然、心不全で亡くなったのだそうだ。
Aちゃんってカワイソウだよ。B君のこと好きで、サッカーやって遊んだときに、みんなで告白しちゃいなよって言ったのに、
恥ずかしいよって言ってたんだけど、でも、やっとメルアド交換して喜んでいたのに、B君、次の日から学校休んで、すぐに死んじゃったんだ。
夕食のテーブルを挟んで娘の話に耳を傾けながら、私は考える。
こんなとき、父親として何と言ってやればよいのだろうかと。
パパ、16歳で死ぬなんていやだよね?
うーん。そりゃまぁそうだね。でも、どうして死んじゃったのかな。
などとかみ合わない会話を続けながら、ふと「サヨナラダケガ人生ダ」というフレーズが頭に浮かんできた。
ソウナンダヨナ、サヨナラダケガ人生ナンダヨナとビールを飲みながら頭のなかで反芻する。
于武陵の「勧酒」を井伏鱒二が訳した中の一節だが、でも、そんなことを説明しても何の慰めにもなりそうもないか、などと考えているうちに、娘は自分の部屋に引き上げてしまった。
父親としてのコミュニケーション能力のなさをいまさらながら感じつつもまた、「ハナニアラシノタトヘモアルゾ」と心の中でつぶやき、ビールのグラスを置いた。


