うっすらと寝ぼけた朝の光の中、高架上を走る通勤電車の窓から一叢の桜の花が目に入った。
住宅密集地帯の煤けたような低い家並みの上に、桜はひょっこりと頭を出して、そこだけ輝いているようだ。
あの桜には思い出がある。
桜の下には公園があって、子供たちがまだ小さかった頃、私たち家族はよくそこで遊んだ。家と家とが軒を接する路地の奥に、ぽっかりと、そこだけ青い空が開けた小さな公園だった。
その公園のすぐ近くに私たちの家があった。
私がはじめて買った一戸建ての家で、私たち家族はみな気に入っていたが、訳あって手放してしまった。
その後何度か私たちは引越しをしたが、子供たちはあのときのあの家が一番よかったねと今でも時々話題にし、そのたびに私の胸はちくちくと痛む。
子供たちも、もっと大人になれば分かると思う。人生いろんなことがあるんだよと私は心の中で呟くのだ。
2006年4月アーカイブ
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